SMC-70Gにはビデオ編集用の “NTSC (PAL) スーパーインポーザー”を使った構成以外に、 “RGB スーパーインポーザー”を使った構成もあった。これはビデオ映像ソースとしてテープデッキではなく、レーザーディスク、カメラなどを用いて、専用のRGB モニター (PVM-1371 や KX-13HG1)の画面上でSMC-70Gのグラフィックスとビデオ映像を重ねて表示するシステムである。グラフィクスはRGBのままビデオ信号を経由せずに表示されるので、文字などがくっきり見やすかった。
また業務用のビデオディスクプレイヤーはRS-232c端子経由でパソコンから映像のランダムアクセス再生のコントロールができた。
この構成は、一つの画面にPCの表示する情報とビデオを情報を同時に表示する各種の用途で使われた。その後、”マルチメディア”と呼ばれるようになるアプリケーションのさきがけであった。
主な用途は教育、商業施設のガイド、博物館、医療関係などであった。当時ソニーはこのような企業向け映像情報システムのビジネス(通称「特機ビジネス」)にも強かったので、それらの映像システムの要素としても SMC-70Gは販売された。
また、当時、各社パソコンのRGB映像出力の方式が標準化されてなく、後年実用化される、様々な解像度の信号に自動同期するモニター(所謂 MultiSync) はまだなかった。大型もモニターやプロジェクターはほぼテレビ信号用であったので、正確なアナログビデオ信号を出力できるSMC-70Gは、業務用の大型ディスプレイ、マルチディスプレイやプレゼンテーション用の映像ソースとしても利用された。
今なら、Excelでグラフ書いて、 PowerPointに貼り付けて、会議室のプロジェクタにノートPCをつなぐだけで簡単にできることが、当時はいろいろと複雑な準備や機材が必要だったのである。
SMC-70として、とりあえず何でもできそうな高性能PCとして作られたソニー初のPCは、2代目でSMC-777 と SMC-70G という個人用と業務用の二つの流れに分岐した。この後、VAIOが発売されるまで、この二つの分野には独立の製品が次々と導入されていった。
まだ、CD-ROM, マルチメディア、デジタル動画、インターネットなどが一般化する以前の1980年代前半で、アナログAVとパソコンの情報を組み合わせる、という用途を開拓したのが SMC-70シリーズであったと思う。