SMC-2000 (3) EIDS 米陸軍仕様

SMC-2000とビデオディスクを組み合わせた “Sony VIEW System”は特定のプロジェクトのために開発された製品であった。 “EIDS” (Electronic Information Delivery System) という米陸軍の兵員への機材操作トレーニング用の一種のシミュレーターのプロジェクト のために開発されたものである。当時、ソニーは業務用のU-Matic ビデオテープのシステムを米軍に大量に納入していて、その延長上で企画されたと思われる。

 

米国の政府調達なので、要求仕様書 (RFQ)に対する入札で調達先が決まる仕組みであり、USのEmerson, カナダのMatrox とソニーの3社が提案書と試作機を提出した。結局、カナダのMatrox社が選ばれ、ソニーは供給することはできなかった。(ちなみにこの Matrox社は最近ではPC用の Graphics Boardのメーカーとして知られていて、2000年前後にはATI社とハイエンド商品では競合していた。)

 

このEIDSの要求仕様は非常に高度なもので、単にPCとレーザーディスクが連動してスーパーインポーズできれば良い、というものではなくて、後のCD-ROMやDVDによるアプリケーションを先取りするようなものであった。具体的には レーザーディスクメディアそのものにPC側で動作するアプリケーションソフトウェアを記録しておいてPCはそこからアプリケーションを起動する ”シングルメディア”起動と、ディスク上の静止画(アナログ記録)を再生しながらデジタル記録された音声を再生する “スチルフレームオーディオ”の二つの機能が要求された。これはレーザーディスク一枚にトレーニングに必要な情報すべてを記録して配布する、ということを目的にしたものと思われる。

 

これを実現するためには、レーザーディスク上にデジタルデータを記録して再生する必要があった。ただ、このシステムのために業界標準のレーザービジョン規格にデジタルデータモードを追加することは難しかったらしく、ディスクとしてはあくまでもビデオ信号としてデジタルデータを扱い、デジタルデータは動画の各フレームに白黒のパターンの画像としてエンコードして記録された。アナログ記録なので、ノイズなどでデータ化けしないように、CDなどと同様のブロック訂正符号やデータインターリーブなどの技術も使われた。

 

ランダムアクセス可能な CAVモードでは一枚のディスクに、動画なら30分が記録可能であり、フレーム数は一枚あたり 54000枚である。EIDS用のディスクでは、この54000フレームをアナログの動画、静止画と、デジタル化された音声(静止画と同時に再生)、MS-DOSの実行プログラム、データなどのデジタルファイルに割り振り、エンコード、フォーマットなどの処理をして、ディスク一枚の全内容をビデオ信号としてアナログ記録した, マスターテープ(1インチテープ)を製作する。そして、そのマスターテープを浜松のビデオディスクの工場に送りスタンパーを刻み、プレス、メッキなどの工程を経てディスクを完成させた。

VIEW-SFA-Format

VIEW Systemのビデオディスク上のデータ記録の概要。1フレーム 4K byte. (日経データプロ 1984年 4月号より)

再生側のビデオディスクプレイヤー(LDP-2000) には、この特殊な方式で記録されたデジタルデータを読み取り、音声として出力したり、PCに IEEE-488 インターフェースで転送する機能をもつ拡張ボードが搭載された。

下記の写真に 2種類の構成の VIEW Systemが並んでいるが、右側のFDDが無い構成がEIDS仕様のもので、ビデオディスク上に記録された MS-DOS, 教材アプリなどを電源ON時に起動して、教材の再生を始める、という後のDVD, BDのようなことをビデオディスクで強引に実現しようとしたものである。 (追記: 右側の構成ではMS-DOSはビデオディスクではなくて内蔵の”ROM Disk”から起動した。)

 

VIEW1-2

右側の構成ではソフトウェアもビデオディスクから読み取るのでフロッピーディスクドライブがない。

 

 

現在であれば、PC上でデジタル動画、音声を含むアプリケーションソフト一式を動くように開発して、最終工程で、CD-R, DVD-Rなどのメディアに記録して動作チェックしてディスクを量産すればよいのであるが、このEIDSのアナログデジタル混在システムでは、複雑なプロセスで一旦ディスクを作らないと動作チェックもできなかった。

 

当時の技術でできることを全てやろうとした仕様であったが、ソフトウェアとディスクの開発プロセスが複雑すぎであった。 米陸軍の契約をとった Matrox社のシステムが大量に売れたという話もその後、聞かなかったので、実験的なプロジェクトとしてあまり進展しなかったのではないかと思われる。

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