Videotex (5) NAPLPS

Videotexは北米では欧州、日本とはまた違う規格 NAPLPS (North American Presentaion Layer Protocol Syntax) (ナプルプス)が策定された。これは、カナダの Telidon という情報サービス用に定義されたものが元になっている。 Telidonは1978年にCRC Canadaというカナダの国立の研究所により開発された。その後、アメリカの AT&Tが開発に加わり、いくつかの機能強化をして「北米標準」である NAPLPSとなった。 (1983年)

 

欧州や日本のVideotexと違い、 NAPLPS規格は、特定のデータ交換網には依存していなくて、モデムで通信さえできれば伝送可能であった。また、放送にも対応できるように一方向の通信でも伝送はできた。文字やモザイクによる擬似グラフィックではなく、任意の多角形などを使ったグラフィックスを画面に表示することもできた。

NAPLPS-CR

NAPLPS-Weather

NAPLPSScreen

NAPLPSによる画面の例 (AT&T Viewtron サービス) http://us.wow.com/wiki/Viewtron より

 

 

米国 AT&T (当時はまだ分割されていなかったので、全米の電話サービスをほぼ独占する巨大企業)の NAPLPSを使ったサービス “Viewtron” とその専用端末 “Sceptre” の紹介ビデオを下記でみることができる。

 

 

米国、カナダの電話会社は、ニュース、天気予報、株価、バンキングなどのサービスを一般向けに提供していたようである。ただ、ここでも、わざわざ専用端末を買って使おう、という一般ユーザーは少なかったようである。

ソニーは、NAPLPSについては電話会社向けの端末ではなく、日本で、独自の企業向けシステムを開発・販売した。中心になっていたのが KTX-1350N というカラーモニター一体型の NAPLPS端末である。これには3.5” FDD 2個がモニターの横についていて、一見PCのようにも見える。実際に、中身は IBM-PCコンパチブルのPCであった。

 

この端末をNAPLPSの再生側と、コンテンツ編集側の両方で使えるようにして、企業内の情報配信などに使うシステムをソニーは業務用の販売チャネルで扱った。顧客には電力会社、自動車メーカーなどで、企業のショールームの案内端末や今でいうデジタル・サイネージのような用途であった。端末専用の箱型で大型モニターなどに接続する VDX-1000というデコーダーのみの製品もあった。

また、KTX-1350Nは実質的にPCであったので、カメラ、タブレットなどを組み合わせて Videotex用のグラフィックスコンテンツを制作する “Frame Creation System”としても販売された。また、国内では、Videotexのような企業向け画像通信システムを中心とする専門の営業部門「ソニーテレコム」が設立され、その部門で、顧客企業向けにコンテンツ作成なども受注していた。これは、業務用の社内ビデオのシステムで、制作機器から再生機・テレビまで、まとめて受注するビジネスで、大きな利益を当時上げていたので、その手法をテープや放送を使わない、映像情報通信にも適応しようとした動きであったと思う。

NAPLPSDraemcreator

国内で販売された NAPLPS Frame Creation System

 

USではソニーは NAPLPS端末を、情報キオスクの会社などに販売した。コンテンツ制作側はすでに先発の会社があったのでソニーは参入しなかった。

NAPLPSはCAPTAINなどに比べると単純なプロトコルでありながら、 欧州のMinitelなどに比べるとグラフィックスの能力が高かった。当然、PCのソフトウェアとして実装することも容易であった。実際に同時期のソニーのPC baseの VIEW System で動作する NAPLPS Decoder もあった。その結果、企業向けに専用の端末をつくる意味は無くなっていったと思われる。

NAPLPSは単独のサービスとしては生き残らなかったが、1988年に米国でサービスを開始した 家庭向けオンラインサービス “Prodigy”はNAPLPSを基本技術として採用している。 Prodigyは AT&T, IBM, CBS, Searsという大企業が出資したJoint Ventureで、IBMのPCにバンドルされるなどして、 1990年には加入者46万人で、業界第2位となった。(一位は Compuserve)

Prodigy

当時、PCで人気だった子供向けゲーム “Carmen Sandiego” のProdigy版の画面。

 

Compuserveは文字ベースのコマンドで操作するのに対して NAPLPSのグラフィックで操作・表示ができる Prodigyは当時、普及しだした家庭向けPCと親和性が高かったと思う。後に同様に、Mac/Windowsと GUIになじみやすいオンラインサービスとして “America On Line” (AOL)がシェアを伸ばす。また、NAPLPSが特定のグラフィックスの解像度に依存したシステムだったことも、Windows時代に生き残れなかった要因の一つであると思われる。

Prodigyはその後も AT&T傘下のISPとして既存顧客にサービスを提供しつづけたが、AT&Tそのものが激しく分割、買収などの対象になったため、他の多くのAT&Tのサービス・製品と同様に現在は存在しない。一方、メキシコの大富豪に買収された Prodigyのメキシコ法人は現在、メキシコでシェア90%のブロードバンド ISPとなっているそうである。当然ながら NAPLPSは一切関係無いとおもわれるが、さすが名前に North American とつけただけのことはあったのかもしれない。

‘80年代の日米欧のVideotexで、’90年代も使われ続けたのは、単機能で大量に無償配布されたフランスの Minitelと、PCのソフトとして Prodigyに組み込まれた NAPLPSだけであった。ソニーの製品も関係者以外にはほとんど知られていない。

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