Quarter/L (7) VOD と ODM

Quarter/Lは規格が AXから、DOS/Vに変わったのちも自社による設計・製造を続けていた。DOS/V規格はハードウェアは世界中で各社が販売している IBM-PC互換機と同一である一方で、CPUの高速化により電磁ノイズ対策やIntelが毎年のように打ち出す新技術への対応などにソニー社内設計のみで対応していくことが難しくなり、1994年頃から社外へ設計製造委託 (ODM)することになった。委託先としては台湾のAcerが選択された。

Acerなどの台湾のPCメーカーは台湾政府の国策もあり、1980年代後半から米国のPCメーカーの製品の設計・製造を幅広く手がけるようになった。PCはマザーボード、電源、ドライブなどの仕様が規格化され、簡単に部品単位で各社から調達できるシステムが台湾国内に成立していった。

最近、シャープを買収して話題になっているホンハイ(FOXCONN)も元はこの頃の台湾のコネクターメーカーであった。現在、中国などに巨大なIT製品の工場を持っている各社は大半がこれらの台湾企業が中国の安い労働力などを利用して大きくなったものである。

Acerはこの頃は自社ブランドの製品と他社向けの製品を同一のAcerという会社が行っていたようであるが、その後 (2002年)、自社ブランドの会社 (Acer)と OEM/ODM専業の会社 (Wistron)に分離する。

設計製造委託というと、デザイン図面と仕様書だけ渡せば、完成品が納入されてきて売るだけ、のような印象を持つ人もいるかもしれないが、実際には部品調達、設計、製造、品質管理の各段階で発注側のメーカーが介入していかないと、当初は期待通りの製品にはならないので、Acer 製造の立ち上げは色々苦労があったと思われる。

この時期、Quarter/Lの型番の前半は”PCX-”から “QL-”に変更される。 ODMへの移行にともなう体制の変更が関係していると思われるが詳細は不明である。

1995年には、Quarter/Lのサーバーとクライアントを使ったVOD (Video On Demand)のシステムが企業向けに販売された。これは最大30台ぐらいのクライアントPCにサーバーからLAN経由でMPEG-1の動画を配信するシステムである。当時はネットワーク、CPU, メモリーなどの性能がまだ低かったので、MPEG-1の再生には専用のデコーダーハードウェアなどが必要であった。

QL-VODCaover

1997年のQuarter/L VODシステムのカタログ表紙

 

このシステムはNTTなどの法人に納入された。用途としては、80年代の VIEW System や一部の Videotexのシステムに近いもので、動画がデジタル化によりメディアに依存しないで配信できるようになった最初の世代の製品である。

 

VOD-System

VODシステム構成図

VOD-Models

VOD用モデル 最上位サーバーは1800万円!

 

 

このシステムのために専用のMPEG-1エンコーダーも開発された。定価780万円という高価な装置であった。20年後の現在、スマホでも4K動画のエンコードが出来る、ということに改めて時代を感じる。

 

VOD-Encoder

MPEG-1エンコーダー QX-3500

 

規格の変更、自社設計からODMへの移行、NetWare, VODなどのアプリケーション開発などを続けてきたQuarter/Lは 1997年の “QL-70Pro”が最後のモデルとなった。

QL-70PRO

Quarter/L最後のモデル QL-70Pro (1997年) (ソニー広報サイトより)

ソニーは1988年から約10年間Quarter/Lシリーズの製品を出し続けてきた。2,3年で終わってしまいがちな80年代の様々なソニーのPC・IT製品とはちがい、業務用を中心に地道なビジネスをしていたのである。

 

Quarter/Lの開発が終了した頃から VAIOの開発が始まり、そちらに異動した担当者も多かった。 VAIO創業についてはいずれ別途説明予定である。
Quarter/Lは社内ユーザーも大事な顧客で、社内の事務系情報システムの標準端末として、全社に導入された。当時はWebサービスとか Intranet とかは無かったので、メインフレーム上で動作する勤怠管理、経費管理、予算管理などのアプリケーションに、 Quater/L上で動作する3270端末エミュレーターでアクセスして使っていた。特に”PAW”という名称の勤怠管理・出張経費清算のシステムは各社員が自分で操作することになっていたので、90年代にソニーで勤務した方は覚えていると思う。 その頃ですら、すでに古臭い仕様のシステムだったので、イライラしたものである。

 

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