General Magic MagicLink (13) その後の Magic, DataRover

 

ソニーが MagicLink PIC-1000を発売したのとほぼ同時期に General Magic社は NASDAQに上場した。 (1995年2月, シンボル GMGC) この頃には10社を超えるメーカーや電話会社がライセンシーとなっていた。人員も増えて、Mountain Viewのビルの2フロアから、すこし離れた SunnyvaleのFreeway 101のそばのより大きなビルに移転した。同時に、「営業」「技術サポート」というようなセクションと責任者ができて、我々ソニーのエンジニアは以前のようにGeneral Magicのエンジニアと直接議論をすることが難しくなっていった。

すでに述べたように、この1995年という年は Internet と Windows 95の年で、世の中の流れは Netscapeなどに向いていて、 General Magicのような専用ネットワークと専用端末の逆に向かっていた。 Yahoo!は 1995年に創業されている。当時のYahoo!は検索やニュースのサイトではなく、様々なWebサイトを職業別電話帳のように分類して列挙するサイトだった。

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1995年頃の Yahoo!のトップページ。 https://www.bloomberg.com/features/2016-yahoo/ より

 

結局ソニーは 1995年に2号機 PIC-2000 と 1996年の NTT向け PIC-2100Jを出しただけで、MagicLinkのビジネスから撤退してしまう。関係者の大半は新たに始まった “VAIO”を担当することになった。(これについては別途述べる。)

General Magic社は、ソニーやMotorolaが製品を発表した頃から、次世代のアーキテクチャを検討していた。当時のCISCからRISCという流れに乗って、 CPUをMotorolaの68000系から RISCに乗り換えることを検討していた。 Newtonが ARMを採用し、 AT&T EoがHobbitを採用していたことも関係あったと思われる。 General Magicは MIPSに注目していた。 MIPS Technologyはこの頃は最大のユーザーであった Silicon Graphicsに買収されている。当時のSilicon Graphicsのオフィスは、現在の Google本社 (Googleplex)のある場所 (Mountain View)で、General Magicからも近かった。

MIPSはソニーでも利用している製品が多く、NEWS Workstation Playstation は MIPS CPUである。その関係で、ソニーの半導体部門は MIPSのライセンスを契約していて、MIPS coreを使ったLSIの開発販売を計画していた。そのつながりで、ソニーの半導体部門から General MagicにLSIの売り込みをする、というようなこともあった。

RISC CPUとともに、専用チップではなく、CPUで電話線通信用モデムの信号処理の大半を行なう “Softmodem”も Gaeneral Magicでは開発していた。その後、数年後の1990年代末にはPC用の内蔵モデムはほとんどがSoftmodemとなった。

ソニー、Motorola, 松下、 Philipsなどのライセンシーが MagicCapを見捨てた後も、General Magic社は次世代端末の開発をやめず、ついに自社ブランドのMagicCap 端末 “DataRover 840”を1998年に発売する。RISC CPUやsoftmodemの技術が使われていたと思われる。発売にあたって、General Magicはicrasという名前の別会社を Spin outさせて icras社の製品として特定用途市場向けに販売しようとしたらしいが詳細は不明である。

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General MagicブランドのMagicCap 端末 Data Rover 840 (1998) http://joshcarter.com/magic_cap/devices より

 

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DataRover 840のマニュアル表紙。 Icras Inc. という別の会社名がついている。 http://research.microsoft.com/en-us/um/people/bibuxton/buxtoncollection/a/pdf/Using_Magic_Cap.pdf  より

 

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非常に珍しい MagicLink, Envoy, DataRoverが揃っている写真 https://www.flickr.com/photos/trespassingpetrolia/15756177279  より

 
各社がMagicCapの開発をやめてしまった1996年頃に、General Magic社は大きく方針を変更している。経営メンバーから当初の創業メンバーはほとんど抜けてしまい、 Steve Markmanという Novell出身のCEOが経営再建しようとしていた。 “DataRover”はそんな状況で、以前の体制から残っていた一部のメンバー(Andy Hertzfeld?)が少人数ですすめていた開発らしい。実際の製造はライセンシーであった沖電気が担当した。

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OKIのロゴがついた DataRoverの試作機 “Appolo” http://joshcarter.com/magic_cap/devices より

 

General Magic社内に残った MagicCap組の残党は、その後も開発をすすめ、画面サイズを半分のQVGAにして、小型キーボードをつけたより小型の電子手帳のようなサイズの製品のプロトタイプを開発していたが、販売にはいたらなかった。

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画面サイズを半分にした試作機 “Gemini” DataRover440として発売されるはずだったが断念。 http://joshcarter.com/magic_cap/devices より

 

(ソニーが抜けた後のMagicCapの開発や製品については Josh Carter氏のweb site の情報を参考にした。写真などは彼の承諾を得て掲載させていただいた。彼はDataRoverなどのソフトウェアの開発メンバーであった。 I’d like to thank Mr. Josh Carter, ex-General Magician, for providing photo and information about DataRover and prototypes.)

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電子手帳のような QVGA画面のPrototype “Zodiac” http://joshcarter.com/magic_cap/devices より

 

General Magicの本体は、モバイル端末とそのネットワークという事業からは手を引き、音声による自動応答エージェントシステム “Portico”というものの開発を始める。これは、現在のSiriやAmazon Echoのようなことを、サーバー側で実現しよう、というものであったようである。当時の技術レベルでは、いろいろ難しかったと思われるが、サーバーに電話をかけて音声で指図をするとメールなどを聞くことができるようなサービスだったらしい。

この当時のデモビデオで Porticoが提供しようとしていたサービスの例を見ることができる。 (Agent = Spy という陳腐なメタファーで笑える。) これが実際にどれぐらい実現したかは不明だが、 GMが1999年に自社の自動車用電話情報サービル “On Star”に Proticoの技術を採用し出資した、という話があるので、ある程度動作する製品はあったと思われる。

 

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