VAIO (4) The First VAIO NOTE, PCG-707

最初のVAIO Desktop PCがSan Jose中心に開発されていた頃に、ソニー独自の Notebook PCの開発グループが藤沢のソニーの工場であった建物に集められた。そのグループには、MagicLink, PowerBook 100, DELL OEMなどの経験者が参加していた。そのグループの最初の製品として 初代 VAIO Notebook PC PCG-707/705 が1997年に発売された。(PCGは PC to Goの頭文字である。)
MagicLinkの開発が終了してしまった後、私はSan Jose現地にいたまま、VAIO Notebookの米国側 企画・マーケティング担当になり、東京の設計・企画担当者と、米国の営業部門の仲介をするような仕事をすることになった。PCG-707はその担当としての最初の商品であった。
PCG-707は通常の折り畳み式 Notebook PCの形状であったが、全体に角ばった下半分と、曲線をとりいれて VAIOのロゴが背面に掘り込まれたLCD部分のデザインに特長があった。色はDesktopと同じく紫がかったグレーを基調としていた。

 

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最初のVAIO NOTE PCG-707 と ドッキングステーションなど (1997)

当時、各社の Notebook PCの画面裏側のロゴは、蓋を閉めた状態で使っている人がみると正しい方向になるように配置されていたが、VAIO Noteはロゴを画面を開けた状態で回りからみて正しい向きになる方向に配置した。また、画面を閉じた状態ではサブブランドである VAIOのロゴがSONYの数倍の大きさで刻印されている、というのもソニー製品としては異例なデザインであった。

 

PCG-707もPCGV-90やVAIOロゴと同じく後藤 禎祐がデザインした。私は恐れ多くも後藤デザイナーに直接電話して「ノートPCはビジネスの道具でビジネスマンが買うのだから紫色は困るんですが。」と今思えば的外れな要望を伝えたのだが、当然、聞き入れられなかった。

 

PCG-707Back

PCG-707の背面の巨大なVAIOロゴ彫りこみ http://lancelot2.blog.so-net.ne.jp/2014-05-06 より

 

Toshiba3

同時期の東芝のベストセラー “Satellite” (日本ではDynabook) の背面。画面を立てるとロゴが上下逆に。 http://www.acrpc.net/toshiba-satellite-t2130cs/ より

本体右側の Drive Bay と呼ばれる部分には、 CD-ROM ドライブ、FDD, 2nd Batteryのいずれかをプラグインして持ち運ぶことができた。 CPUはPentium MMX 166MHz, 32Mbyte RAMであった。

 

また VAIOとしては初めてソニーのAV機器と接続する独自の機能が二つ提供された。

 

ソニーは 1996年に最初の Cybershot デジカメ DSC-F1を発売していた。この Cybershotにはメモリースティックのようなメモリーカードはなく、撮影した画像は内蔵メモリー記録して、シリアルインターフェースか赤外線通信でPCやプリンタに転送して利用するものであった。(メモリー容量 電池容量が少なかったので口の悪い者は「サイバーチョット」と呼んでいた。)

 

DSC-F1

最初のCybershot DSC-F1 (1996)

 

PCG-707はこの Cybershotと赤外線通信 (IrDA)で接続して画像を取り込む機能が装備された。赤外線ポートが本体の後ろ側の中央にあって、カメラと赤外線ポートの位置合わせがしにくかったため、赤外線を90度回転させてPCの横にカメラを置いても接続できるようにする専用のプリズムまで同梱されていた。また、取り込んだ写真を整理するためのオリジナルアプリケーションソフトウェア “Picture Gear”がインストールされていた。この Picture Gearは現在ソニーがカメラ用などに提供している Play Memories Home という同種のソフトウェアの源流のようなものである。

DSC-F1-IR

プリズムを使って横にあるCybershotと赤外線通信させる方法 (PCG-707マニュアルより)

 

PictureGear

PCG-707にインストールされていた画像管理ソフト “PictureGear”  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990920/sony.htm より

 

動画カメラとしては 1995年からソニーは DV Camcorderを初の個人用デジタルカムコーダーとして発売していた。 DV Camcorderはデジタルビデオの入出力端子として iLink (IEEE-1394)端子を備えていた。 PCG-707には、専用の Docking station があり、それには通常のモニター、プリンター、キーボードなどの端子の他にこの iLinkの端子があった。この端子に DV Camcorderを iLink cableで接続することにより、 Camcorderのデジタルビデオを VAIOの HDDに取り込み編集することができた。当時のPentium MMXの能力では、単純なカット編集しかできなかったが、デジタルビデオをPCで扱うということを可能にした。

DCR-TRV900

当時のDV Cam DCR-TRV900

 

i.Link (IEEE-1394) はAppleとソニーなどがコンソーシアムを作って標準化したインターフェース規格で、Apple側では FireWireと呼ばれていた。製品に搭載したのはソニーのDV Camcorderの方が先であった。Appleは元々は陳腐化しつつあった SCSI Interfaceの代用として開発していたらしいが、その用途には実際に使われなかった。Appleは2000年からMacにFirewireを標準装備しだして、その後、初期のiPodでは Firewireを iPodのPC/Mac接続インターフェースとして採用していた。 i.Linkは 400Mbps/800Mbpsという高速でかつ非同期と同期の両方の転送モードをもち、複数のデバイスをDaisy Chain接続できるというすぐれた技術であったが、USBが高速化して普及するにつれポジションを2010年頃にはほぼ失った。

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当時のVAIOやDV Camについていた i.Link 端子とロゴ https://ja.wikipedia.org/wiki/DV%E7%AB%AF%E5%AD%90 より

IEEE-1394

同じものを Appleは Firewireと呼んでいた。 http://www.cavsi.com/preguntasrespuestas/que-es-ieee-1394-y-para-que-sirve/ より

PCG-707はAV機器としてのPCの用途をソニーのカメラとの組み合わせで初めて具体化したVAIO PCであった。また、ノートブックPCのブランドを最初に世に問うたモデルでもある。1997年に発売された後、同一デザインでCPU,メモリーなどの構成を変えたモデルを4ヶ月おきに発売し、1999年までPCG-700シリーズとして同一のデザインで発売された。

 

1998年にはCPUにPentium IIを採用した PCG-800シリーズが発売された。基本的なデザイン、仕様は700シリーズと同様だが、Pentium IIの「力強さ」を表現するために、LCD背面のカバーに「力こぶ」のような膨らみがつけられた。別により強力なバックライトが装備されていたわけではない。LCDが1インチ大きい13インチ型になったので、周辺回路をいれるスペースがLCD背面に必要だったのだと思われる。

 

(VAIOの背面ロゴの向きについて記したが、背面ロゴについては、他にこのようなエピソードがあった。

1995年に、元フットボール選手のO.J.シンプソンが元妻を殺害した容疑で逮捕され、その裁判が1996年に全米にテレビ中継された。当時、大きな話題を呼んだ事件だったので、この裁判の裁判長の日系人 “Judge Itoh”も有名になった。法廷の Judge Itohの机の上にはソニーのトリニトロン PCモニターが置かれていた。その裏(つまりテレビに映る面)には “SONY”のロゴの浮き彫りがあったのだが、「何者か」がこのロゴをよく目立つように黒く”SONY”の部分だけ塗っていた。その結果、トリニトロンモニターは”Judge Itoh”も愛用している、という「思わぬ」宣伝効果をソニーは得た。当時、トリニトロンモニターはソニーブランドもOEMも高いシェアをとっていたので、そんな無理な宣伝は不要だったとは思うが。)

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裁判長の席においてあったよく目立つSONYロゴつきのモニター (1995) http://saleintothe90s.tumblr.com/post/86961789104/127-the-oj-wrap-up-part-i より

 

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VAIO (4) The First VAIO NOTE, PCG-707」への3件のフィードバック

  1. ピンバック: VAIO(8) PCG-505 発売! | Good Old Bits

  2. ピンバック: VAIO(12) F150, XR and QR | Good Old Bits

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