VAIO (10) C1とその子孫達

 

505シリーズの第2世代の Z505 (1999) から、本体に Memory Stick Slot と iLink 端子が標準装備されるようになった。これにより、Sonyの Cybershot や Camcorder と静止画・動画をやりとりして新しい楽しみを提供する、という当初の VAIO の AV IT Integration が初めて商品として具現化され始めた。

MS4MB

4Mbyte の初代 Memory Stick (1998)

これはまた、市場 Shareの高い Camcorder のユーザーを 新ブランドのVAIO購入に動機づけるという役割もはたして、カメラとPCの両方の部門にとって効果の高い戦略となった。

DCRPC3

Memory Stickに静止画記録できるDigital Handycam (1999)

 

このカメラとの融合を一歩進めた商品が 1998年に発売された カメラ内蔵型の超小型PC VAIO C1 である。いまでは多くのPCのLCDの上にひっそりとついているカメラであるが、PCにカメラそのものをつけたのはこの C1が最初である。 横長のLCDに、180度回転して自分も反対側も撮影できるカメラ “Motion Eye”をつけていた。 このカメラを使って、撮影した写真を即座にメールするソフトや、Cybercode という QR Code みたいな2次元バーコードを読み取るソフトがついていた。 USでは “Picture Book” という名称がつけられ 505と同様のヒット商品になるかと期待されたが、それほどには売れなかった。

C1

PCG-C1 初のカメラ付きモバイル VAIO (1998)

MotionEye-C1XE

特徴となっていた回転式カメラ “Motion Eye” (2号機 PCG-C1XE, 1999年)

cybercode

独自の2次元バーコード “Cybercode”

 

 

このとき提案された写真を撮影してすぐメールする、という用途はその後 Sharpが携帯電話に搭載してJ-Phoneの「写メール」として大ヒットになり、その後の携帯電話の必須機能になった。その一方で PCのカメラはついているのは多いがあまり使ってもらえない残念な機能となってしまっている。

藤原紀香 出演の J PHONE 「写メール」搭載機種のCM (2001年)

 

VAIO C1は日本市場では一定の支持者があり、シリーズ機種が開発された。C1とその後継モデルのために、極限まで小さいPCのマザーボードが、多層基板、内層間スルーホール配線などの高度な技術を駆使して長野県豊科の工場(現在のVAIO株式会社)で開発された。

C1-PCB

PCG-U1のマザーボード  (PC Watchより)

 

VAIO C1の直接の派生機種は PCG-C2GPS(1999) である。これは、C1からカメラを取り去り、代わりにGPSレシーバーを取り付けたものである。当時、GPSはカーナビにしか使われてなくて、ソニーも車載機器部門がカーナビを出していた。C1が携帯電話の「写メール」を先取りしていたように C2GPSは現在のスマホのGoogle Mapのように、車以外の場所での道案内を目指したPCであった。この用途のために “Navin’ You” という名前の地図アプリをソニー社内でゼンリンの地図を元に開発された。また、屋外での利用を想定してソニーで開発された低温ポリシリコン型液晶によるバックライト不要の反射型カラー液晶パネルが採用された。

C2GSP

PCG-C2GPS (1999)

 

反射型LCDは暗いところでは見えなくなるので、逆に手前側からLCDを照らす「フロントライト」というものが付属品としてつけられていた。形状から社内では「鬼瓦」と呼ばれていた。

FrontLight

VAIO C2GPSに付属した「フロントライト」 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991104/sony.htm より

C2GPSはCD-ROMを内蔵していなかったので、利用する際は目的地周辺の地図データをCD-ROMからハードディスクにあらかじめコピーしておく必要があった。また、当時は現在のようにネットワーク経由でGPS衛星の軌道情報や補正データを入手するAssisted GPSは使えなかったので、衛星の捕捉に時間がかかった。このように実用性にはまだ課題が多かった。C2GPSのことを記憶してる人は非常に少ないと思う。

VAIO C1シリーズは、常に最先端を取り入れようとしていて、カメラ、GPSに続いて、全く新しいCPUを導入した。Transmeta社の開発した Crusoe というCPUが PCG-C1V (2000) で採用された。これは Intel Pentium と互換性があるが、全く違ったアーキテクチャで実現されたCPUである。詳細は開示されていなかったが、基本的にはVLIW型のRISC CPUで、実行時にPentiumの命令を独自の命令セットに翻訳し、それを内蔵の命令キャッシュに保持することにより、翻訳のオーバーヘッドなしにPentiumと同等の性能をより低消費電力で実現する、というものである。この技術は”Code Morphing”と呼ばれていた。

Transmeta

Transmeta社の Crusoe CPU

 

当時 Transmeta社は Linuxの生みの親 Linus Torvalds を社員として雇い、ソニーなど各社のPCにCrusoeが採用され、株式上場を果たしている。その後、Intelが消費電力を下げた Pentium/MなどのCPUを出したため、2008年、Transmeta社は消滅した。 CrusoeはCode Morphingの他に、動的にCPUの動作クロックを変化させて消費電力を最適化する “Long Run”という技術も採用していたが、後にIntelのCPUなども類似の技術を採用している。

DavidDitzel

Transmeta 社長 Dave Ditzel  http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/612153.stm より

C1シリーズ以外にTransmetaのCrusoeを採用した独自性の強いPCをその後, 21世紀に入ったあともソニーは商品化している。特徴的なのは、C1のカメラを大型化し、ライブストリーミング配信用のPCとして開発された VAIO-GT (PCG-GT1, 2001年)である。このライブストリーミングのための「放送局」 PerCasTV  というサービスビジネスと同時に発売された。

vaiogt1-2

C1のカメラを大型化した Streaming 配信専用 VAIO GT (2001)

また、キーボード、液晶をさらに小型化した Ultra Mobile PC, VAIO U (PCG-U1, 2002年)もCrusoeを用いて商品化された。これは文字通り片手にのるPCであった。これが VAIO GTから大型カメラを取り去った構造を元にしている。

U1

超小型PC VAIO-U1 (2002)

 

また、VAIO C1も第三世代のPCG-C1MSX (2002年)にはテレビチューナーを接続できて、これで在宅中にテレビ番組をハードディスク録画して、本体ごとこれを持ち出して視聴する、という デスクトップ型 VAIOの “GigaPocket”機能をモバイルで実現した。

C1TV

PCG-C1MSXの外部 TV チューナー (2002)

 

このC1シリーズが,20世紀末に実現していた、カメラ、GPS, モバイルテレビ視聴、という用途はその後、次々に日本メーカーの携帯電話、さらに全世界のスマートホンで実現されていった。

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VAIO (10) C1とその子孫達」への1件のフィードバック

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